会長挨拶

第30回日本がん検診・診断学会総会の開催にあたって

小川眞広

会長 小川 眞広
日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科分野
日本大学病院消化器内科 超音波検査室

この度、第30回日本がん検診・診断学会総会会長を拝命いたしました。2020年からの新型COVID-19爆発的な感染拡大により、世界的に未曾有の混乱状態を来しております。会員の皆様方におかれましてはこの間に大変な時期を過ごされていたのではないでしょうか。それに伴い、進行癌の発見率が激増しているともいわれています。今後2人に1人ががんに罹る時代を迎えるにあたり、がんの早期発見の重要性が高まっておりますが、がん検診向上のためには、社会に即した新しい戦略が強く求められています。この間、私共の職場の環境も大きな変革が起きたのは紛れもない事実であり、検診分野においては形態の改革が迫られるなど大きな転換点となりました。その後、苦しい時期を過ごしながらワクチン接種の普及や感染者の減少、治療薬の開発などにより徐々に明るい兆しも見えるようになりました。これまで生活のみならず仕事面においても種々の活動が自粛・縮小を強いられていた日々からwith COVID-19時代に向けて、新たな一歩を踏み出す機運が高まっているのではないでしょうか? このような環境下に第30回学会総会の会長を拝命したため、今回の総会のテーマを『がん検診・診断 次の一歩』とさせていただきました。周囲の状況を見ながら恐る恐る小さな一歩を踏み出そうとする方、タイミングを計り大きな一歩を踏み出そうとしている方、それぞれの置かれている環境により異なりますが、どんな形であれ時は進んでおり一歩を踏み出さなくてはなりません。そこで、今回の学術集会では、原点に戻ってがん検診・診断の在り方・方向性を改めて見つめ直しこれからの発展・飛躍を見いだすきっかけをつくる場として開催をしたいと考えております。

そして、今回の総会は第30回と区切りの開催となります。大きな節目となる第30回記念大会の会長を任命され、身に余る光栄と感じるとともにその責任の重さに身の引き締まる思いでいっぱいです。本学会は、癌学会、癌治療学会と横並びに検診・診断を主体としたがん検診・診断学会の必要性から平成3(1991)年、日本消化器集団検診学会の有賀槐三理事長のもとに、日本肺癌学会(代表・坪井栄孝氏)、日本婦人科がん検診学会(代表・天神美夫氏)が参加し、平成4年には日本腎泌尿器疾患予防医学研究会(代表・渡邊泱氏)、日本乳がん検診学会(代表・木戸長一郎氏)、日本小児がん学会(代表・澤田淳氏)が、平成5年には日本医学放射線学会(代表・片山仁氏)が参画し、計7学会で、各種がん検診に共通した諸問題、特にがん診断学、検診方法、精度管理、検診の評価および行政の対応などについて協議し日本におけるがん検診・診断の発展に寄与する目的で設立活動してきた学会です。

一方、超音波、内視鏡、CT、MRI等々、画像機器等の発展はめざましく、あらゆる領域のがんの早期発見も可能となってきました。さらに、ゲノム診断をはじめとする新しい診断技術も次々と開発されています。治療においても患者の遺伝子情報をもとにしたコンパニオン診断、最適な治療法を選択する個別医療も日々進展し常態化しつつありこれらの新しい診断学を早期に検診に取り入れる努力も常に行われています。つまりがん検診・診断の多様化が進む中、多領域の知識を集中しで習得できる学会が本学会の特徴と言えます。この節目となる会で過去の変貌を振り返りつつ未来についての方向性が示唆されるような最新の研究発表と活発な議論を頂き、学会を通じて参加された皆様方のmotivationを高め、それぞれが大きな一歩を踏み出すことのお手伝いをすることができれば学会長としての社会貢献であると考えております。

COVID-19の収束を願いつつ、開催様式は不透明な部分はあるものの一人でも多くの方々にご参加いただき皆様にとりまして有意義な学会となりますよう、事務局一同、鋭意準備を進めて参りますので、何卒、ご理解・ご協力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

末筆ながら皆様方の益々のご繁栄をお祈り申し上げます。